業務改善助成金

Posted

「業務改善助成金」は、中小企業・小規模事業者が、事業場内で最も低い賃金を30円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その設備投資等にかかった費用の一部が最大600万円まで助成される国の制度です。 ※雇用から3ヵ月が経過した労働者が受け取る事業場内で最も低い時間給を指します。

 

 

 業務改善助成金のメリット・デメリット 

 

【 メリット 】

 ・設備投資費用の一部を助成金として受けることが可能

  →新たに財務的なリスクを負うことなくさまざまな設備投資に取り組める点が最たるメリットです!

 ・従業員の満足度向上を期待できる

  →生産性向上を目的とした設備投資が対象となるため、利益の増加が期待でき、この利益を賃上げの原資として、従業員の満足度向上も期待できるでしょう。

 ・原則として要件を満たしていれば助成を受けることができる

  →取組内容を審査して採択が決定する補助金とは異なり、要件を満たし、きちんと募集要項を理解した上で計画を立て申請を行えば、助成を受けることができます。不交付となった場合も、理由を確認して再申請や異議申し立てができ、書類や実施計画の不備が理由だった場合は、修正し再申請すれば交付される可能性があります。

 ・事業場ごとに申請でき、事業場の所在する地方自治体によっては、上乗せで助成を受けることができる(福井県、石川県、、、、、、など ※令和6年度のもの。)

・これまでに業務改善助成金を活用したことがある事業者も申請可能です

 

【 デメリット 】

・要件を満たさないと申請できない

 →詳しくはこの後解説しますが、中小企業・小規模事業者であることや申請時の事業場内最低賃金が地域別最低賃金+50円以内であること、解雇や賃金引き下げを行っていると申請できないなど要件があります。

・元々、設備の導入計画や賃上げを予定していた場合、時期の調整が必要

 →設備の購入前に申請が必要、賃上げのタイミングを検討する必要があるなど条件があります。そのため、予定していた賃上げや設備導入があり、業務改善助成金に申請する場合は、元々の予定通りに進めると助成が受けられない可能性があります。

・対象外となる経費もあるので注意が必要

 →原則として、パソコンや車両等

 →不快感の軽減のための設備導入や、単なる設備交換などは対象外となります

・地域別最低賃金の引き上げ時期に注意しないといけない

 →例年10月頃に全国的に行われる地域別最低賃金の引き上げが行われてから交付決定された場合など、引き上げ額が予定より大きくってしまう場合があります。

・他の助成金で賃上げする場合は併給できない可能性がある

・全体の予算枠があらかじめ決まっているため、申請期間内であっても募集を終了する可能性がある

~~業務改善助成金の交付要綱・要領は年々変更されているため、必ず最新の内容を確認しましょう~~

 

 業務改善助成金の助成額、助成率 

 

※10人以上の上限額区分は、特例事業者が、10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に対象になります。

 

 ◆業務改善助成金の活用例 

 

実際に形のある設備だけでなく、教育訓練やコンサル費用も対象になります。対象となる経費の種類が多いため、正しく理解すれば金額を多く受給できます。

 

具体的に導入できるものにはどんなものがあるの?

現在の事業の「時間短縮」「利益率向上」「質の向上」に繋がる設備等が対象です。

※下記に業種別に例示いたしますが、「●●業なので、これは助成対象になる/ならない」というものではありませんので、あくまで参考としてご覧ください。

≪製造業の場合≫

商品を包装する機械、運搬に使用するバキュームクレーン、食材カッターや皮むき機、冷凍庫や冷蔵庫、冷凍自動販売機、運搬用の昇降機、稼働状況管理システム など

≪サービス業の場合≫

自動会計システム(POSレジシステム)、自動包装機、トランシーバー、自動釣銭機、自動整備業の溶接機、クリーニング店のプレス機、美容室のシャンプー機器 など

≪建設業の場合≫

軽貨物自動車、工事用電動工具、バッテリー など

≪飲食業の場合≫

自動配膳ロボット、調理機器、製氷機、自動オーダーシステム、食洗機 など

≪福祉事業などの場合≫

リフト付き福祉車両、乾燥機付きの洗濯機、冷蔵庫、電動昇降用モーターベッド など

≪医療業の場合≫

自動洗浄機能付き歯科ユニット、診療台、検査機器、新型脱毛機器 など

≪その他全般に共通するもの≫

経営コンサルティング(専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上)、教育の研修、店舗改装(改装による配膳時間の短縮)、お客様がネットから商品を注文できるHP、IC タグ付きの商品管理システム、作業管理システム など

 

実際の業務改善助成金の支給額っていくらくらいになるの?

実際にどのくらいの助成が受けられるのか?例を使って支給額を計算してみましょう。

【設備投資費用が280万円の場合の例】
事業場規模が30人未満のある事業所で、地域別の最低賃金が1100円である中、事業場内の最低賃金を1150円から1215円に引き上げた場合、事業場内最低賃金が1150円なので助成率は3/4になります。

5人の労働者の最低賃金60円引き上げを行い、「60円コース・4~6人」の区分により、助成上限額は190万円です。
設備投資費用が280万円かかった場合、280万円×3/4=210万円となりますが、助成上限額が190万円のため、上限額を超える分は助成されません。この場合の支給額は190万円となります。

 

 ◆業務改善助成金を申請するには 

 

 業務改善助成金の申請条件 

 

・中小企業・小規模事業者である ※従業員がいない場合や、労働保険に加入していないと対象となりません。

・解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと

・事業場の最低賃金と地域の最低賃金との差が50円以内であること

 (例えば最低賃金が1,010円の場合、事業場の最低賃金は1,010〜1,060円でなければなりません。)

・事業場の最低賃金を+30円以上引き上げること

※単に賃金を引き上げるだけでなく、引き上げ後の金額を就業規則等に記載する必要があります。

・業務効率化に繋がる設備投資等を行うこと

★事業場内最低賃金の引上げや設備投資等は、これから実施するものが助成の対象となります。

 

-特定要件について

 以下に当てはまる場合は特例事業者となります。②に該当する場合は、助成対象経費の拡充も受けられます。

①賃金要件:

  申請事業場の事業場内最低賃金が1000円未満である事業者

②物価高騰等要件:

  原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前3か月間のうち任意の

  1か月の利益率が前年同月に比べ3%ポイント以上低下している事業者

 

 業務改善助成金のスケジュール 

 

交付申請   

受付開始   令和7年 4月 1日※前年度より想定

申請期限   令和7年12月26日※前年度より想定

事業完了期限 令和8年 1月30日※前年度より想定

ただし、審査が長期化した場合、申請期限、事業完了期限は延長となる場合があります。

 業務改善助成金の申請フロー 

― ① 交付申請・事業計画提出

   事業場の最低賃金と地域の最低賃金を把握し、引き上げ額を決め、交付申請書と事業実施計画書

   を作成・提出します。

― ② 審査・交付決定

   概ね1か月程度で、審査結果が通知されます。

― ③ 設備・機器の導入など、事業を実施します。

   交付決定がされてから、設備投資を行います。

― ④ 最低賃金の引き上げ

   ③とあわせて、交付決定がされてから最低賃金の引き上げも行います。

― ⑤ 事業実施報告書提出

   事業(③④)完了後、事業実績報告書を作成・提出します。

― ⑥ 支給申請書提出

   ⑤とあわせて、支給申請書を作成・提出します。

― ⑦ 審査・支給決定

   概ね1か月程度で審査結果が通知されます。

― ⑧ 助成金入金

   決定した額の助成金が支給され、指定口座に入金されます。

― ⑨ 状況報告の作成・提出

   助成金入金後、状況報告を行います。

― ⑩ 消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額報告書の作成・提出

   消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額報告書の作成し提出します。

 

☆ 準備を始めてから、①の交付申請を行うまでに2〜3ヶ月かかることも珍しくありません。検討を始めた早めの段階から準備することをおすすめします

☆ 業務改善計画の策定にはその設備投資を行うことで生産性の向上・従業員の労働能率の増進にどのような効果があるのかを明記します。設備投資等を行う場合は、助成対象経費の見積書の他に相見積り書も添付書類として求められるのであらかじめ準備しましょう

☆ 地域の最低賃金は、毎年10月頃に変更されることが多いため、交付決定のタイミングによっては、そもそもの地域別最低賃金額が変わってしまう可能性があります。賃金の引き上げを計画しているタイミングと最低賃金が変更される時期に注意してスピーディーに準備を進めましょう

 

 

 業務改善助成金のに取組むにあたり考え方のコツ(ヒント) 

 まずは自社においてどんなことが「労働力を効率化する取組み」になるのかを考えてみましょう。

 ・労働量を減らすにはどうすればよいだろうか?

  例)一つの作業に対して、人員数を削減したり、取組時間を削減したり、自動化したり、、、etc.

 あるいは

 ・同じ労働量で生産量を増やすにはどうすればよいだろうか?

  例)もともとの工程自体を省略したり、、、etc.

  また、そのどちらでもない変化球になりますが、

 ・新たな価値を生むにはどうすればよいだろうか?

  という考え方も審査員の判断によっては認められる可能性もあります。

 

 ◆業務改善補助金のよくある質問 

 

・どんな費用が対象になる?

  現在の事業の「時間短縮」「利益率向上」「質の向上」に繋がる設備が対象となります。

 【全企業が対象となるもの】

 ECサイト、システム開発、ITツール購入、業務機械、厨房器具、内装工事、コンサル、研修、

 特殊車両(8ナンバー、リフト付き福祉車輌)

 【一定の条件を満たした企業が対象となるもの】

 PC、スマホ、タブレット、乗用車・貨物車(定員7人以上or1台200万円以下)、設備投資に関連する  「広告費」「机・椅子などの事務用品」

一定の条件とは、「利益率減少」もしくは「売上減少」をしていることを指します。どちらかを満たすと、助成対象となる設備が増えるため、しっかりと確認しましょう。

・賃金はいつ上げればいい?賃金の引き上げは段階的に行っても問題ない?

  交付決定後から事業完了期日までとなっています。段階的には行えません。

  賃金の引き上げは、交付決定後から事業完了期日までとなっていますので、交付決定より前に引き上げた場合は要件を満たさなくなるので注意が必要です。

  また、10月頃には全国で地域別最低賃金の引上げが実施されることがありますが、これに伴い事業場内最低賃金を引き上げる必要がある場合など、時期にも注意が必要です。

・「引き上げる労働者数」の数え方に決まりはありますか?

  「引き上げる労働者」に算入されるのは以下①②の労働者です。

   ①事業場内最低賃金である労働者

   ②事業場内最低賃金である労働者の賃金を引き上げることにより、賃金額が追い抜かれる労働者

  ただし、いずれも申請コースと同額以上賃金を引き上げる必要があります。

            ※令和6年度の事例

  季節労働者の場合は、前の季節にも雇用しており、今後も同じ季節に雇用する予定があることが条件で、事業場の最低賃金に含むことができます。

設備投資額に下限はある?

  設備投資額の下限は、税別で10万円です。税込10万4,500円のものでも、税抜だと9万5,000円で

  対象外になるためご注意ください。

・正社員しかいない場合はどうすればいい?

  正社員しかいない場合は、月給を以下の式で時給に換算します。

  「月給÷1ヶ月の平均所定労働時間」

  時給に換算した社員の中で、最も低い金額が事業場の最低賃金になります。その金額が地域の最低

  賃金+50円以内に収まり、30円以上時給アップすれば条件を満たします。

  ※通勤手当や時間外手当、休日割増賃金などは算入できないためご注意ください。

・申請は全て自社で行わなければならない?

  申請は、自社で行う場合と専門家に相談する場合があります。

  自社で行うと、コストが安く済みますが、手間が増え正しい知識がなければ受給できない可能性もあります。反対に専門家に依頼する場合は、助成金の受給確率は上がるものの、コストがかかります。

  申請をどちらで行うかは、メリット・デメリットを見極めて検討しましょう。

 最後に 

 

「業務改善助成金」は設備導入と賃上げ、賃上げに伴う就業規則の変更等やるべきことが多い助成金です。しかしながら、コストを抑えた設備投資を行い、従業員のモチベーションアップと売上アップを同時に図ることができる国の助成金制度ですので、対象となる企業様にはぜひ活用して欲しいです。

「自社も申請できるかな?」「どのタイミングで賃上げするか分からない…」など疑問や心配事がございましたら、是非一度ご相談ください。まずは疑問を解決し、申請への第一歩を踏み出しましょう!